北前船は人も文化も運ぶ “昆布処 しら井”

 

前々回の記事でお伝えした「青柏祭(せいはくさい)」の「でか山」が豪快に走り抜ける通り、一本杉通り。

600年の歴史があると言われるこの通りにはたくさんの”語り部処”があり、各店のご主人や女将さんから歴史と文化のお話を聞きながら観光を楽しめます。
観るだけではなく会話も楽しめるのが一本杉通りの特徴。

今回は北海道産の天然昆布のみを扱う「昆布・海産物処 しら井」さんにおじゃましてきました!


趣のあるのれんをくぐり、大きな大きな昆布に出迎えられ、どこか懐かしい空気に包まれながら、七尾ならではの昆布の歴史をこれでもかと聞いてきましたよ!

 

(1)知ってるようで知らない”昆布の種類”

皆さんは昆布の種類をいくつ言えますか?
私が知っていたのは日高昆布、羅臼昆布、利尻昆布だけだったのですが、他にも真昆布、広昆布、細布昆布…さまざまな種類の昆布がありました。
そして同じ名称の昆布であっても、市場に売られているものは価格帯はまちまちで、味もバラバラだそう。(等級があるそうです)
ここ「しら井」さんでは本当に美味しい昆布を知ってほしいという想いから、選りすぐりの商品のみが陳列されています。

「羅臼昆布」は濃厚でこくのあるダシがとれる昆布。
函館付近でとれる「広昆布」。昆布の中で一番長く幅がある種類のため、はばひろく末永いお付き合いを…という意味で結納品としても使われます。

レジ横には昆布巻きが置かれていました。
4~5時間コトコトと炊かれた昆布巻きは旨みたっぷりで絶品です!

その他にも所狭しと能登の味が並びます。

「おぼろ昆布」や「とろろ昆布」も並んでいます。
表面をけずったものは黒く、中にいくにつれて白くなっていくそうです。

これだけあるとおみやげを選ぶのも楽しくなりますね!

(2)北前船は人も文化も運ぶ。”能登と昆布の関係”

続いてお話してもらったのは「どうして七尾で北海道の昆布を売り始めたのか」というお話。
答えは江戸時代にさかのぼり、七尾市が北前船の寄港地だったから、ということ。

「北前船(きたまえぶね)」。江戸時代、北海道の港から日本海を渡って終点の大阪(大坂)までお米や魚、昆布やニシンなどを運んだ船。

昆布が運ばれた航路は「昆布ロード」と呼ばれていました。
富山県は羅臼昆布の消費量が日本一。
福井県敦賀市は国内最大のおぼろ昆布の産地。
そして終点大阪は今でも昆布屋さんが多い土地。
なるほど…!

「ちなみに、北海道の稚内市には石川県出身者が非常に多いです。北前船は、人も文化も運んだということですね。」

というお言葉も印象的でした。

昆布のお話がこんなに歴史を感じるものだったとは…
北海道と石川県とのつながりも、ここに来るまで知りませんでした。

(3)こだわりは30年前から!”石川県の材”で造られた店内

そしてこのお店に石川県らしさ、能登らしさが感じられるわけは、そういったつながりだけではありませんでした。
店内のいたるところに石川県を感じる素材がふんだんに使用されていたんです。

能登らしさあふれる造りの店内
石川県の県木「アテ」を使用した柱
北前船が寄港した際、海に沈められていた碇
貝殻を散りばめた石畳
「でか山」の形をかたどった椅子

他にも、
昆布巻きや糠漬けなどが入っている器は輪島塗、
柱を支える石や黒壁の基礎になっている石は久田石、
店頭ののれんは能登上布…

あれもこれも!?と驚きの連続!
30年前、この石川県づくしを実現するために建築士を探し回ったというご主人のお話も必聴です。

——

話を聞けば聞くほど歴史を感じるお店ですが、お客様にお伝えしたいのは難しい話ではなく、昆布にもたくさんの種類があり、その中で本当に美味しい昆布を食べてほしいということ。

都会では昆布巻き専門店や酢昆布専門店などもありますが、ここ七尾では、しら井で昆布巻き、ダシ昆布、おぼろにとろろ、何でも揃います。

今の季節のおすすめ料理は山菜の昆布締め。
また、北陸ではとろろ昆布のおむすびもよく食べられます。
(全国で食べられているものだと思っていましたが、北陸だけのようですね。)

2Fにはギャラリーも。

北陸・能登に来られた際は、ぜひこの昆布の味と、能登の空気を味わいに訪れてみてください。
もちろんご主人や女将さんとの”語り”も忘れずに…

お店を出る頃にはただの「昆布の薀蓄」ではない、「昆布の本当の歴史と文化」を感じているはずです。

右下の看板も「でか山」の形をしています

たくさんお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

昆布・海産物處 ㈱しら井
〒926-0806 七尾市一本杉町96
TEL:0767-53-0589
営業時間:9:00~18:30
定休日:第2、4火曜日